インドネシアでの性暴力被害
★インドネシアの証言者たち - 2014年06月28日 (土)
インドネシア
(一) 雑誌「世界」(岩波書店)2000年12月号 特集・戦時性暴力 [資料]各国の「慰安婦」被害・年表・裁判 より引用(122p~123p)
戦時中の性暴力被害の特徴:古くから世界の香料貿易の中心地であったインドネシアの群島に、17世紀初頭オランダは豊かな鉱物・森林資源、石油、農産物などを求めて350年に渡る植民地経済支配体制を確立した。アジア太平洋戦争勃発後の1942年、この植民地支配体制を「大東亜共栄圏」に置き換え、戦争遂行に必要な資源を求めてインドネシア侵攻(1942年)したのが大日本帝国であった。日本軍はインドネシアを人的資源の拠点として位置づけた。その「人的資源」とは、「兵補」、「労務者」、そして皇軍「慰安婦」であった。戦争前に蘭領インドネシアを占領するために必要な「衛生上」の視察を密かに行った深田軍医少佐が、強かん事件や性病蔓延を防ぐためとして、「原住民は生活難のため売淫するもの多し。しかし、バンドンその他性病多きをもって、村長に割当て、厳重なる検査の下に慰安所を設くる要あり」と提言したように、「慰安婦」制度は日本軍の戦略の重要部分を占めた。軍政監部は強制的・詐欺的な手段を用いて女性たちを徴集する政策に事実上の了解を与えた。軍事作戦地域における大義なき軍政がこのような「労務」の強制徴用と奴隷労働を可能にしたと言えよう。(以下略)
次により具体的に「慰安婦」被害の実態と解放後の問題点、支援運動について
(二) 「日本軍性奴隷制を裁く 2000年女性国際戦犯法廷の記録」4巻 第4章インドネシア「慰安婦」問題(296p~313p)を要約します。
被害者たちの証言

日本軍が女性を駆り集めた方法は物理的暴力の行使、騙しによるもの、恐怖心の扇動によるものなどが絡み合っている。15歳から17歳までの抵抗できない少女に集中している。(要約者注:マルディエムさんは13歳、

慰安所の形態は、日本軍駐屯地近くに住む女性たちが軍人に拉致されるなどして造られた慰安所、朝鮮、台湾の女性が連行され監禁された慰安所、オランダ人抑留所から若い女性が連行され監禁された慰安所(注1)、またインドネシア女性がフィリピン、ビルマ、シンガポールなど他の国々の慰安所に送られた例もある。
特筆すべきは、医師(軍医)が健康診断(性病検査)と称して女性たちを強かんするケースが多々見受けられる事である。また将校専用「慰安婦」が多く存在することはインドネシアの「慰安婦」問題の特質のひとつである。自分の将校官舎に専用の「慰安婦」を囲っていた。日本兵との間に生まれた子ども(注2)は保護されることなく、インドネシア社会から民族的差別を受けた。
「慰安所」からの解放後も、経済的基盤を失ったほとんどの被害者は貧困と社会的差別の中で生きてきた。被害者エミさんは解放後、帰還した里で「日本のパン屑」として蔑視され、近隣の人々によって家まで焼かれている。多くの被害者が身体的(性病、不妊症など)、精神的に後遺症を受けていたが、家族にも話せず、リハビリテーション、カウンセリングなど受ける機会が与えられなかった。
1992年インドネシアではじめて名乗り出た

翌年インドネシア法律扶助協会(LBH)が新聞紙上で被害者に対し登録をよびかけると、多くの被害者が名乗り出た。
しかしインドネシア政府は<独立>と<開発>を優先させ、被害者個人への補償でなく、高齢者福祉施設建設プロジェクトへの支援を求めた。これに対し日本政府は「財団法人 女性のためのアジア平和国民基金」(国民基金)を通し今後10年間に3億8000万円の「償い金」を支払う事で合意した。被害女性と支援者はこの合意に抗議声明を表明したが、2007年に「国民基金」は事業を終了し、「償い金」が公正に使われた証拠は提示されていない。
この項目を書くに当たって二つの参考文献を引用及び要約しました。
一つは雑誌「世界」(岩波書店)2000年12月号
二つ目は「日本軍性奴隷制を裁く 2000年女性国際戦犯法廷の記録」第4巻(緑風出版)です。いずれも木村公一氏による執筆です。
現在のインドネシアにおける「慰安婦」問題は

注1 この事件に関与した日本将兵たちは敗戦後バタビアにおいて裁判にかけられ、死刑を含む判決がくだされているが、インドネシア女性を「慰安婦」にした犯罪について、日本将兵が裁かれたという資料はいまのところ見あたらない。
注2 将校坂部康正は「この戦争で東南アジアに残された日本人混血児は3万人と称せられる」と記している。(阪部康正「アンボンは今」海軍経理学校補修学生第10期文集刊行委員会編『滄溟』同委員会、1983年、312p)
「慰安婦」問題にとりくむ福岡ネットワーク(明)
「慰安婦」問題にとりくむ福岡ネットワーク
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