インドネシアを訪れて: トゥミナさんの墓石 碑文完成 ドキュメンタリー映画「TUM」の試写会に参加して



                   木村公一 
         
 去る9月中旬、わたしはインドネシア中央ジャワのソロ市を訪れました。それはドキュメンタリー映画「TUM」の試写会で講話を依頼されたためでありました。


TUMとはトゥミナの略名である。トゥミナは18歳のとき、突然、日本兵に拉致され、「慰安所」に連れ去られた痛ましい経験をもっています。


しかも彼女は1992年7月に地方紙「スワラ・ムルデカ(独立の声)」で自分が「慰安婦」被害者であることをインドネシアで最初に名乗り出た女性でもありました。


彼女の名乗り出を受けて、マルディエムやスハルティといった女性たちが後に続くのでありますが、いずれにしても、トゥミナは多くの性暴力被害者に勇気と尊厳を与えた女性でもありました。


その彼女を主題としたドキュメンタリー映画が、ソロの若手の監督ピラール・スティアブディと多くの協力者によって産声を上げたのです。けれども、それは付加や再編集、および手続きなどの事情によって未だ完成には至っていません。


 トゥミナは2003年に他界しました。その墓はただ土が盛られた寂しいものでした。この映画に登場するトゥミナの墓は、「『慰安婦』問題と取り組む九州キリスト者の会」が日本全国に募金を呼びかけ、その土盛りの上に建てられたものでした。

この墓は記念碑の形をとっています。そこを訪れる者は日本軍の性犯罪の歴史の一端に触れることができるのです。

碑文 DSCN2377          ゴジャック墓DSCN2379 (1)
トゥミナの墓石と碑文           養子のゴジャックの墓



碑文の英文と日本語訳(訳責・木村公一)

In memory of 200,000-400,000 women in Asia Pacific and Netherlands,
Forced under systematic sexual violence as “Ianfu” by the
Military Government of Japan, during Asia Pacific War of 1931-1945.
Tuminah is the first Indonesian “Ianfu” survivor who broke the
Public wall of silence in 1992.

Voice of Tuminah had become source of power to the
survivors of “Ianfu” who voiced their international solidarity
for justice on the war crimes of Japanese Military.
We will continue to struggle for justice and human rights
Rehabilitation of the “Ianfu” survivors worldwide.
Indonesia “Ianfu” Solidarity Metwork


1931年から1945年におよぶアジア太平洋戦争のさなかで、日本軍国主義政府の組織的な 性暴力よって「慰安婦」として強制使役された、20万人とも40万
とも言われるアジア・太平洋およびオランダの女性たちを記念して
トゥミナは1992年にインドネシアにおける沈黙の政治の壁を打ち破った
最初の「慰安婦」被害者である

トゥミナの叫びは「慰安婦」被害者たちにとって力の源泉となり、
日本軍国主義の戦争犯罪を正義の法廷に訴える
国際的連帯を呼び起こした

私たちは世界に散らばる「慰安婦」被害者たちの正義と人権および
社会的厚生が実現する日まで闘い続ける所存である。

インドネシア「慰安婦」連帯ネットワーク


注:
ここに、アジア全体の被害者数について「… から40万」という数字が記されていますが、
これを草稿したインドネシアの「<慰安婦>連帯ネットワーク」の人々によれば、
この数字はインドネシアの被害規模から推定してはじき出されたもので、資料的
な基礎づけがある訳ではないとのことです。


トゥミナの墓から10mも離れていないところに、彼女が育てた養子のゴジャックの墓がトゥミナを見守るようにして建てられています。このゴジャックは「スワラ・ムラデカ紙」の記者として活躍し、将来を嘱望された人であったが、肺がんのために短命を余儀なくされました。彼は義母トゥミナとの長い対話を経て、彼女に意識の変革と勇気を与えた人として忘れることのできない人なのです。

ソロの「慰安婦」問題研究サークルによれば、当時ソロにはふたつの陸軍「慰安所」が存在したと言われています。ひとつはトゥミナさんが入れられた「チヨダ旅館」と呼ばれた「慰安所」で、現在そこには大きな銀行のビルが建てられています。

DSCN2450.jpg  元慰安所「チヨダ旅館」現在「ホテル」


もうひとつは「フジ旅館」と呼ばれた「慰安所」です。そこには当時の建物がそのまま社会福祉法人の施設として現在も使用されています。この建物を確定したのは、ソロ在住の「慰安婦問題」と取り組んでいるファニーさんです。




DSCN2442.jpg        DSCN2439.jpg
元慰安所「フジ旅館」(一番奥)       今も残る面影
現在施設として使われている         ドア向こう側が部屋だった  




さらに、わたしは監督のピラールさんたちと共に、ソロ市から40kmほど北にあるサラティガ市に住むスリ・スカンティさんを訪問することができました。スリさんは1934年に中央ジャワ、プルウォダディ郡の郡長の12人兄弟の末っ子として生まれ、9歳の時にオガワという日本軍将校の「専属慰安婦」にされた人です。おそらく、インドネシアの「慰安婦」被害者の中ではもっとも若い人でしょう。
このスリ・スカンティさんを探し出したのは、「慰安婦問題」と取り組んでいるエカさんです


DSCN2375.jpg

左 フジ旅館を確定したファニーさん  右 スリ・スカンティさんを探したエカさん



私たちの願いは、近い将来この映画に日本語の字幕を付されて多くの人々に鑑賞され、日本の学校と社会において歴史教材のひとつになることです。


 

DSCN2414.jpg        DSCN2430.jpg
    
スリ・スカンティさんとの対談         スリ・スカンティさん
                          エカさん   筆者




「慰安婦」問題と取り組む九州キリスト者の会 木村 公一





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Author:「慰安婦」問題にとりくむ福岡ネットワーク
私たちは「慰安婦」被害者に20年あまり前に出会い、その被害の深刻さに衝撃を受けました。私たちは被害者が生存中に「解決」したいと、さまざまな道を探りながら活動し続けてきました。今も大きな課題として残る「慰安婦」問題を多くの人に分かりやすく伝え、今後このような性暴力を起さないために私たちはブログを立ち上げました。

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