日本だけがなぜ非難されるの?-他国の場合は?
★軍「慰安婦」制度について - 2013年05月25日 (土)
日本だけがなぜ非難されるの?-他国の場合は?
「慰安婦」問題を論じる際、慰安所をもっていたのは日本だけじゃない。どこの軍隊でも慰安所と同じようなものがあった。日本だけが非難されるのは不当だ、ということがよくいわれます。果たして、そうでしょうか。ポイントは、自国の軍が売春宿(慰安所)をつくっていたかどうかです。 現在までの研究で判明しているのは、軍が率先して推進していったのはナチス・ドイツと日本の軍だけです。連合国軍の周辺にも、売春宿があったことは事実ですが、軍中央は、管理・統制することは認めていませんでした。以下、少し具体的にみていきましょう。
ナチス・ドイツ国防軍が売春宿を設置していった
ナチス・ドイツでは、軍中央の命令で、国防軍、SS(ナチス親衛隊)が軍専用の売春宿を設置していきました。1942年には、500ヵ所の売春宿をもっていたといわれています。フランスなど西方占領地では既存の売春宿を管理下に置きましたが、東方占領地、特にソ連では売春が禁じられていたので新設せざるを得ず、女性を強制徴用したといわれています。註〔1〕
ただ、売春宿のことはタブーとされ、実態解明は進んでいませんでしたが、クリスタ・パウルの『ナチズムと強制売春』註〔2〕によって、強制収容所内にも専用売春宿があったことなどが次第に明らかなってきました。
連合国軍は、既存の商業売春宿を利用
アメリカは、ピューリタニズムの影響もあって売春を忌避する性道徳があり、軍は公的には売春を禁止する政策をとっていました。註〔3〕〔1〕同書
現地の部隊は、民間の売春宿を指定し、あくまでも既存の商業売春宿を利用しましたが、本国に知られるとしばしば閉鎖されました。註〔4〕
イギリス軍も占領地で民間の売春宿経営を許可する策をとりましたが、ロンドン司令部からの命令で閉鎖された所もあります。秦郁彦氏は、英米両軍は日独軍のような大量レイプ事件をひき起こしていないのは確か、と言っています。註〔5〕
軍隊がいる周辺には売春宿がつくられるのは共通(このこと自体問題)しています。英米では、商業売春宿を利用し、軍は性病検査をするなどの一定の管理を行ったというのが大体の状況です。強制的に将兵の性欲処理を管理した日本軍とは明らかに違っています。
日本軍は、立案・計画からすべておこなった
他国の軍とは安易には比較できないにしても、日本軍の際立っている点は、慰安所の設置計画から、業者の選定・依頼・資金斡旋、女性募集、女性の輸送など全面的に軍が管理運営していたことです。(詳細については、他のブログ内項目で述べられています)
しかも、多くのアジア、オランダの女性を長期にわたって「性奴隷化」し、女性の基本的人権を奪うようなことを軍が率先して推進していったことに対して国内外から非難されているのです。
歴史的事実をきちんと見極める目を
なのに、橋下大阪市長の一連の慰安所必要論の発言の中でもみられるように、どこの国も慰安所は持っていた、悪いのは日本だけではない、との論法は、日本社会に一定浸透していることも確かです。他の奴も悪いことしたのに、自分だけが非難されるのは不当だとする棚上げ論法に過ぎません。他国の軍とは比較するまでもなく、日本軍の責任の所在は明らかです。
2007年のワシントン・ポスト紙の「THE FACTS」の意見広告註〔6〕が、逆に日本に対する非難を高め、米下院本会議の決議に突き進んでいった経緯は記憶に新しいところです。歴史的事実をきちんと押さえ、認識していくことが、ほんとうの「THE FACTS」といえます。
〔脚註〕
(1)秦郁彦『慰安婦と戦場の性』新潮選書1999年 フランツ・ザイトラー『売春・同性愛・徴兵忌避のための自己損害 1939年から1945年までのドイツ軍衛生管理上の問題』(1977年)(邦訳未)の中で500ヵ所あったことを述べていると、秦郁彦は書いている。
(2)クリスタ・パウル『ナチズムと強制売春』強制収容所特別棟の女性たちー 明石書店1996年
ドイツナチス軍の強制収容所内の売春宿の実態を資料や売春婦とされた女性たちへのインタビューによって明らかにした衝撃の書。著者は、アジアの女性たちによる(日本軍「慰安婦」問題)キャンペーンに対して、意識が高く、連帯し、要求を突きつける女性たちである。感嘆の思いで見守ってきた、と記している。
(3)林博史『アメリカ軍の性対策の歴史―1950年代まで』「女性・戦争・人権」学会誌第7号、2005年
http://www.geocities.jp/hhhirofumi/paper71.htm
(4)田中利幸「なぜ米軍は従軍慰安婦問題を無視したのか」『世界』1996年10月号
(5)(1)同書
(6)屋山太郎、櫻井よしこ、すぎやまこういち、西村幸祐、花岡信昭の5人で構成された「歴史事実委員会」の名前で出された。国会議員44人、有識者13人が賛同者として名を連ねた。広告費用はすぎやまが全額負担。
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「慰安婦」問題を論じる際、慰安所をもっていたのは日本だけじゃない。どこの軍隊でも慰安所と同じようなものがあった。日本だけが非難されるのは不当だ、ということがよくいわれます。果たして、そうでしょうか。ポイントは、自国の軍が売春宿(慰安所)をつくっていたかどうかです。 現在までの研究で判明しているのは、軍が率先して推進していったのはナチス・ドイツと日本の軍だけです。連合国軍の周辺にも、売春宿があったことは事実ですが、軍中央は、管理・統制することは認めていませんでした。以下、少し具体的にみていきましょう。
ナチス・ドイツ国防軍が売春宿を設置していった
ナチス・ドイツでは、軍中央の命令で、国防軍、SS(ナチス親衛隊)が軍専用の売春宿を設置していきました。1942年には、500ヵ所の売春宿をもっていたといわれています。フランスなど西方占領地では既存の売春宿を管理下に置きましたが、東方占領地、特にソ連では売春が禁じられていたので新設せざるを得ず、女性を強制徴用したといわれています。註〔1〕
ただ、売春宿のことはタブーとされ、実態解明は進んでいませんでしたが、クリスタ・パウルの『ナチズムと強制売春』註〔2〕によって、強制収容所内にも専用売春宿があったことなどが次第に明らかなってきました。
連合国軍は、既存の商業売春宿を利用
アメリカは、ピューリタニズムの影響もあって売春を忌避する性道徳があり、軍は公的には売春を禁止する政策をとっていました。註〔3〕〔1〕同書
現地の部隊は、民間の売春宿を指定し、あくまでも既存の商業売春宿を利用しましたが、本国に知られるとしばしば閉鎖されました。註〔4〕
イギリス軍も占領地で民間の売春宿経営を許可する策をとりましたが、ロンドン司令部からの命令で閉鎖された所もあります。秦郁彦氏は、英米両軍は日独軍のような大量レイプ事件をひき起こしていないのは確か、と言っています。註〔5〕
軍隊がいる周辺には売春宿がつくられるのは共通(このこと自体問題)しています。英米では、商業売春宿を利用し、軍は性病検査をするなどの一定の管理を行ったというのが大体の状況です。強制的に将兵の性欲処理を管理した日本軍とは明らかに違っています。
日本軍は、立案・計画からすべておこなった
他国の軍とは安易には比較できないにしても、日本軍の際立っている点は、慰安所の設置計画から、業者の選定・依頼・資金斡旋、女性募集、女性の輸送など全面的に軍が管理運営していたことです。(詳細については、他のブログ内項目で述べられています)
しかも、多くのアジア、オランダの女性を長期にわたって「性奴隷化」し、女性の基本的人権を奪うようなことを軍が率先して推進していったことに対して国内外から非難されているのです。
歴史的事実をきちんと見極める目を
なのに、橋下大阪市長の一連の慰安所必要論の発言の中でもみられるように、どこの国も慰安所は持っていた、悪いのは日本だけではない、との論法は、日本社会に一定浸透していることも確かです。他の奴も悪いことしたのに、自分だけが非難されるのは不当だとする棚上げ論法に過ぎません。他国の軍とは比較するまでもなく、日本軍の責任の所在は明らかです。
2007年のワシントン・ポスト紙の「THE FACTS」の意見広告註〔6〕が、逆に日本に対する非難を高め、米下院本会議の決議に突き進んでいった経緯は記憶に新しいところです。歴史的事実をきちんと押さえ、認識していくことが、ほんとうの「THE FACTS」といえます。
「慰安婦」問題にとりくむ福岡ネットワーク(鶴)
〔脚註〕
(1)秦郁彦『慰安婦と戦場の性』新潮選書1999年 フランツ・ザイトラー『売春・同性愛・徴兵忌避のための自己損害 1939年から1945年までのドイツ軍衛生管理上の問題』(1977年)(邦訳未)の中で500ヵ所あったことを述べていると、秦郁彦は書いている。
(2)クリスタ・パウル『ナチズムと強制売春』強制収容所特別棟の女性たちー 明石書店1996年
ドイツナチス軍の強制収容所内の売春宿の実態を資料や売春婦とされた女性たちへのインタビューによって明らかにした衝撃の書。著者は、アジアの女性たちによる(日本軍「慰安婦」問題)キャンペーンに対して、意識が高く、連帯し、要求を突きつける女性たちである。感嘆の思いで見守ってきた、と記している。
(3)林博史『アメリカ軍の性対策の歴史―1950年代まで』「女性・戦争・人権」学会誌第7号、2005年
http://www.geocities.jp/hhhirofumi/paper71.htm
(4)田中利幸「なぜ米軍は従軍慰安婦問題を無視したのか」『世界』1996年10月号
(5)(1)同書
(6)屋山太郎、櫻井よしこ、すぎやまこういち、西村幸祐、花岡信昭の5人で構成された「歴史事実委員会」の名前で出された。国会議員44人、有識者13人が賛同者として名を連ねた。広告費用はすぎやまが全額負担。
「慰安婦」問題にとりくむ福岡ネットワーク
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