安倍首相の「慰安婦問題の本質は人身売買の犠牲者」発言を批判する

安倍晋三首相は最近「慰安婦」問題の本質は人身売買による犠牲者であるとの発言を繰り返しています。3月のワシントンポストのインタビューや国会での発言、4月28日の 日米首脳会談後の共同記者会見で河野談話を継承すると発言し、「慰安婦」について「人身売買の犠牲となった、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々」と表現。前日の27日のハーバード大学での講演でも「慰安婦」問題の本質を「人身売買」と表現しました。
「慰安婦」を強制売春の被害者と見なし、売春制度自体を否定する米国では、この発言は反発を買うことはなく概ね受け入れられたようです。一方安倍首相の熱烈な支持層である右翼的な歴史修正主義者たちの「慰安婦=朝鮮人業者による人身売買、売春婦」説にも受け入れられるまことに巧妙な発言です。

安倍首相の「慰安婦」被害者の本質を人身売買犠牲者とする問題点を以下に述べます。

①河野談話を継承するとしながら、女性たちが本人の意思に反して連行され、慰安所でこうむった被害や、軍や国の加害責任に具体的に言及することを避け、謝罪もなく、被害者たちに到底受け入れられるものではありません。

②河野談話の「慰安所は、軍当局が設置・管理し、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛しいものであった」との日本軍により性奴隷状態に置かれていた本質的な部分について言及することを避け、相変わらず被害を連行時の形態のみにすり替えようとしています。こうした発言は安倍首相の「朝鮮半島においては軍や官憲による強制連行はなかった。貧しい親に売られたもの。」との従来の認識の延長で、貧困につけ入る民間業者・朝鮮人業者に責任を転嫁しかねない危ういものです。

③民間業者たちは軍の要請と許可を受け官憲の監視下で募集にあたっていました。当時日本が入っていた「婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約」等で売春への就労は成年女性に限り、本人の意思に基づくことが規定されていました。軍や国は「慰安婦」制度導入にあたって国内では国際条約にのっとった指導を一応していますが、植民地朝鮮や台湾では除外され、就労詐欺的な募集が横行していました。安倍首相は、植民地差別に基づいた本人の意思に沿わない募集がなされたことにも触れなくて、人身売買一般の説明になっている点も問題です。

④連行の形態においても、中国、フィリピン、インドネシアなど戦地の女性の場合は軍による強制連行が多かったことを無視しています。

最近の報道によると、安倍首相は歴史修正主義に関する厳しい国際的な批判の包囲の中で、植民地支配や侵略を認め謝罪した村山談話や、河野談話を受け継ぐとして国際的な批判をかわしながら、談話の中身である具体的な歴史認識に触れないでスルーする方針のようです。村山・河野談話に猛烈な反対をしてきた安倍首相は、国内の右翼的な支持基盤の維持のためにも、談話の中身の歴史認識に関する言及や謝罪は避け、国の加害責任を回避する巧妙なすり替えを行おうとしているように見えます。

 「人身売買」発言には韓国などからは厳しい批判がなされていますが、安倍政権は欧米に向けてはできうる限り追随し、アジアの当事国の批判は無視するようです。こうした安倍政権の態度は厳しく批判していかねばなりません。戦後70年の安倍談話に向けて安倍首相への批判と被害者や周辺諸国との和解に向けた提言を今後ともつづけていきたいと思います。


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私たちは「慰安婦」被害者に20年あまり前に出会い、その被害の深刻さに衝撃を受けました。私たちは被害者が生存中に「解決」したいと、さまざまな道を探りながら活動し続けてきました。今も大きな課題として残る「慰安婦」問題を多くの人に分かりやすく伝え、今後このような性暴力を起さないために私たちはブログを立ち上げました。

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河野談話全文

慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話  いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。  今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。  なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。  いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。  われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。  なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。(1993年8月4日、外務省ウェブサイトより

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